ぼくは、たった二日間だけど、スナックのマスターになります。それも、ふつうにおばちゃんがママとして毎日営業しているスナックで、ぼくがマスターとなるのです。
 

 ぼくは画家だけど、スナックのマスターでもあって、それと小説家になることも目指していて、そんなからだがばらばらになったマスターのいるお店に、ぜひ遊びにきませんか。
 

 正直ちょっとどきどきしていて、ぼくがこの二日間マスターをしているあいだ、ママは旅行に行ってしまっているのでお店にはいません。なので常連客が来たりしたら、その客にとっては、なんだか知らないおっさんがカウンターにいるって、びっくりすると思うのです。でもそんなことが起きても、ぼくはスナックのマスターなので、スナック画家魂で切り抜けます。
 

 それと、せっかくなので、ママには内緒で、ふだんお店に飾ってある絵を全部はずして、自分の最近描いている絵を壁にかけたりします。
 

 スナックの場所は巣鴨です。おじいさんおばあさんの街です。お店は地下にあります。せまくて暗い穴蔵です。この穴蔵はどこに接続するのかわからないけど、できたら光りの強いあの世に近いもんであってほしいと、そう願っております。

 
(栗原一成)